科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践 研究開発プログラム 国立研究開発法人 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター
【応募期間】
2024年4月10日~2024年6月5日
【助成対象・内容】
社会技術研究開発事業の概要
国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST という)社会技術研究開発センター(以下、 「RISTEX」という)は、社会の具体的な問題の解決を通して、新たな社会的・公共的価値の創出 を目指します。社会の問題解決に取り組む関与者と実施者が協働するためのネットワークを構築し、 競争的環境下で自然科学と人文・社会科学の知識を活用した研究開発を推進して、現実社会の具体 的な問題解決に資する成果を得るとともに、得られた成果の社会への活用・展開を図ります。 社会技術研究開発事業(以下、本事業という)は、RISTEX 等において社会の問題解決に重要と 考えられる研究開発領域・プログラム(以下、領域・プログラムという)を設定して提案を募集し、 選定された研究開発プロジェクト(以下、プロジェクトという)を推進するものです。領域・プロ グラムのマネジメントは、アドバイザーの協力を得て、総括が行います。研究代表者及び研究開発 実施者(以下、実施者という)は、総括のマネジメントのもと、自ら所属する機関等において研究 開発を推進します。 なお、本事業は、内閣府ウェブサイト(https://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/index.html) に掲載している競争的研究費制度に該当します。
プログラム目標
本プログラムは、科学技術が人・社会と調和しながら持続的に新たな価値を創出する社会の実現 を目指し、倫理的・法制度的・社会的課題を発見・予見しながら、責任ある研究・イノベーション を進めるための実践的協業モデルの開発を推進します。
研究開発対象
本プログラムは、責任ある研究・イノベーションの営みの普及・定着に資する、実践的協業モデ ルの創出に向けた ELSI/RRI の研究開発を対象とします。具体的には、科学技術の進展の先にある べき社会像や、人・社会にもたらす新たな価値や変化の「探索と予見」、それに伴って生じるリスク やベネフィット、インパクトの「分析と評価」、人・社会・倫理の観点に立った研究開発の「設計と ガバナンス」、そして、責任ある研究・イノベーションの推進に資する「科学技術コミュニケーショ ンの高度化」に取り組む研究開発を推進します。
本プログラムでは、科学技術と人・社会との間に生起する日本社会ならではの諸課題をも対象と しつつ、国際的な展開・発信を念頭に置いて取り組むことを重視します。このとき、日本の社会や 文化、歴史の特性も意識した視点で考えることが大切です。日本社会の文脈や、日本の事例が持つ 一般性・特殊性について考察を深めることで、改めて科学技術と人・社会との最適な適応方策の発 見や、グローバルに通用する新しい価値創造につながることを期待します。従って、海外の研究や 事例の単なる紹介や理論の適用に終わらないことを求めます。
研究開発プロジェクトにおいては、具体的な科学技術の ELSI 対応への取り組みを基盤とした研 究構想であることを重視し、対象とする新興科学技術の研究開発の現状を踏まえ、すでに ELSI が 顕在化し事後的だが解決のインパクトが大きなもの、研究開発の初期段階から予見的に ELSI 検討 に取り組むべきもの、すでに社会実装が進んでいる科学技術だが ELSI 検討が急務なものなど、具 体的な課題設定を求めます。
なお、本プログラムは、ELSI/RRI の営みの基盤強化や普及・定着に資する研究開発も重視して います。例えば、新興科学技術と社会との関わりに関する国際比較調査や動向分析などを通じて理 論構築に取り組む研究開発、ELSI/RRI の人材発掘やネットワーク構築に取り組む研究開発、多様 な新興科学技術に適用しうる ELSI/RRI の方法論や評価指標の研究開発なども想定します。これら の研究は、必ずしも総合的なチーム体制や実践的な取り組みを必要とせず、実施期間や予算など比 較的小規模なプロジェクト構想も想定されます。
期待される主なアウトプットの例は、以下 a~c のとおりです。
a. ELSI への具体的な対応方策の創出
– ELSI 観点でのリスク・ベネフィット、インパクトなどの分析・評価
– 新たな価値を提供するビジネスデザインや、知財・標準化戦略の提案
– 法規制などのレギュレーション、認証・標準化などの枠組みや、保険・補償などの経済的 手法も含めたルール形成への提言
– さまざまな社会・環境下での、研究開発の設計指針や境界条件、行動規範(CoC)の提案
– リスクガバナンスのための評価指標や指針、共通認識となりうるガイドラインの提案
b. 共創の仕組みや方法論の開発
・ 研究開発の上流段階から、科学技術が人や社会に与える影響や倫理的・法制度的課題を、 研究現場に機動的・有機的にフィードバックするための仕組みや方法論の開発 – 科学技術の先にあるべき社会像、取り巻く問題構造や課題群、関わるステークホルダーの 探索・予見・分析
– 共創的科学技術イノベーションのための対話設計・コーディネーション手法
– 上流からのステークホルダーとの共創手法やテクノロジーアセスメントなどの機能
・ 科学技術コミュニケーションの機能とデザインの高度化のための実証的検証と開発 – 多様な立場のステークホルダー間における、科学技術やリスクの知識翻訳手法
– 多様な視点の存在を意識した、建設的な議論の成立や収斂の対話・調整手法
・ 情報通信技術など新たな科学技術を活用した、科学技術コミュニケーションの高度化に 資するシステム、ツール、評価方法・指標の開発
c. トランスサイエンス問題の事例分析とアーカイブに基づく将来への提言
・ 日本や世界が直面した過去及び現在の顕著なトランスサイエンス問題に関する事例分析と課 題の抽出、アーカイブ化に基づく、将来への提言と海外に向けた発信
※科学技術の ELSI への取り組みを基礎づけ、展開するために参照すべき、科学技術と人・社 会との関係に関わる重要な問題とみなせるもの、とくに、人の命に関わるような社会的イ ンパクトの大きな問題も対象とします(例えば、COVID-19 をはじめとする新興感染症に 関わる問題、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故なども含みます)。
なお、共創的科学技術イノベーションの実践や方法論開発に焦点をあてた「b. 共創の仕組みや 方法論の開発」については、対象とする科学技術や ELSI の特性を踏まえ、「a. ELSI への具体的な 対応方策の創出」と一体的に取り組むことが望まれます。また、ELSI への取り組みを基礎づけるために、「c. トランスサイエンス問題の事例分析とアーカイブに基づく将来への提言」に取り組む提 案も歓迎します。 もちろん、研究構想の内容に応じて、ここに挙げていないアウトプットの提案も十分想定されます。a. ~ c.の研究開発要素にどのように取り組むのかに応じて、研究開発期間や予算規模、実施体 制なども柔軟に構想・設計し、提案してください。
研究開発の実施体制、提案および研究開発にあたっての留意事項
・ 国内の大学、研究機関、公益法人、民間企業、NPO・NGO、行政機関など、組織として JST か らの研究委託が可能な主体と連携して研究開発を実施してください。
・ 研究開発の実施にあたっては、人文・社会科学、自然科学、工学者、企業、NPO・NGO、メデ ィア、URA、コミュニケーター、法曹、行政、地域社会等の、問題意識や課題を共有する研究 開発の現場・ステークホルダー・コミュニティとの具体的な連携や協働の下に取り組むことを 原則とします。これまで、人文・社会科学を中心として ELSI/RRI に関する先駆的な研究開発 や取り組みがなされてきており、本プログラムは、それらの知見の活用や人材の活躍を基盤と しつつ、自然科学や産業における研究開発現場との連動・接続にチャレンジする提案を期待し ます。
・ ELSI/RRI の営みの基盤強化や普及・定着に資する研究開発にあたっては、必ずしも現場やス テークホルダー、コミュニティとの具体的な連携や協働の下に取り組むという原則を適用しません。連携や協働の有無にかかわらず、優れた提案を採択します。
・ 本プログラムは、個別テクノロジーの研究開発そのものの支援ではなく、その責任ある遂行を 支援するための研究を目的としています。従って、現在推進中の他の既存研究開発事業やプロ グラムとの連携・接続を含めた提案も歓迎します。
・ 研究対象、研究の手法や前提条件、技術開発におけるデザインなど、研究開発のあらゆる側面 においてジェンダーをはじめダイバーシティの視点に配慮することとします。
・ 研究開発を推進しながらも人・社会の変化やニーズを把握し、ビジネス創出への視点を持つことにより、スピーディに成果の還元と発信をすることを求めています。
・ 研究開発の企画・実施にあたっては、RRI の視点を重視します。すなわち、先見性(Anticipatory)、省察性(Reflective)、熟議牲・包摂性(Deliberative, Inclusive)、応答可能性(Responsive) のアプローチを組み込むことが重要です。
・ 本プログラムは、研究開発の実践を通じて、ELSI/RRI に関する深い理解を持ち、それを研究 開発の場で生かすことができる人材の輩出を目指しています。具体的には、人文・社会科学や 特定の科学技術を専門としつつも、従来の専門性の枠組みに閉じることなく複数の科学技術分 野・テーマを横断して ELSI/RRI の実践、あるいは関与ができる人材などです。そのため、20 ~40 代の若手人材のプロジェクト参画や雇用を歓迎します。プロジェクトで若手研究者を雇用する場合には、研究代表者にはその育成計画(必要と考えるスキル・能力、経験を積むため の工夫、本プログラムで獲得したスキル・能力を継続的に利活用できる場の想定など)を示す ことを求めます。
【助成金額】
本プログラムでは、研究開発テーマの特性や社会ニーズなどに応じた柔軟性・機動性を持った ファンディングを行う観点から、提案内容に応じて、予算規模や期間を柔軟に設定します。 そのため、通常の研究開発プロジェクトに加え、例えば、①取り組むべき ELSI の具体化検討や 論点整理を集中的に行い研究開発計画の充実化を図る、②必要な研究分野やステークホルダーの模 索や連携を行い十全な研究実施体制を構築する、などについて取り組むプロジェクト企画調査の枠 組みも設定します。
■研究開発プロジェクト
・ 研究開発期間: 1~3年6ヶ月(※1)
・ 研究開発 費: 600~1,200 万円/年(直接経費)程度(※2)
※1 研究開発期間の設定は、12 ヶ月(2024 年 9 月)~42 ヶ月(2027 年 3 月)です。
※2 研究開発内容に応じて、研究開発期間や予算規模を柔軟に構想・設計し、提案してください。
■プロジェクト企画調査 企画調査期間: 6ヶ月(単年度)
・ 企画調査 費: 150~300 万円/半年(直接経費)程度(※1)
プロジェクト企画調査は、独立した調査・研究活動そのものを目的とするものではありません。将 来的に本プログラムへの研究開発プロジェクトの提案・実施につながることが期待され、そのために 必要な研究開発設計の仮説検証や実施体制の補完などに取り組むことを企図した枠組みです。 従って、原則として本プログラムの次回公募に応募することを条件とします。その際には、他の提 案と同様に選考を行い、優先的な取り扱いはありません。
※1 研究開発内容に応じて、研究開発期間や予算規模を柔軟に構想・設計し、提案してください。
JST は委託研究契約に基づき、研究開発費(直接経費)に間接経費(原則、直接経費の 30%)を 加え、委託研究費として研究機関に支払います。 研究機関に配分される研究開発費の決定にあたっては、プログラム総括による研究開発進捗状況 の把握等のマネジメントにより調整させていただくことがあります。
【応募方法】
応募要件
応募時に研究倫理教育に関するプログラムを修了していることが必須です。 修了していることが確認できない場合は、応募要件不備とみなしますのでご注意ください。 応募時は研究代表者のみで構いません。
プロジェクトの研究代表者となる方に自ら提案していただきます。応募の要件は以下のとおりで す。予めご承知おきください。 ※採択までに応募要件を満たさないことが判明した場合、原則として、研究提案書の不受理、 ないし不採択とします。 ※応募要件は、採択された場合、当該研究開発プロジェクトの全実施期間中、維持される必要が あります。実施期間の途上で要件が満たされなくなった場合、原則として当該研究開発プロジ ェクトの全体ないし一部を中止(早期終了)します。
重複応募について
(1)1 人の方が研究代表者として応募できる提案は、1 件のみです。
(2)本プログラムは、「SDGs の達成に向けた共創的研究開発プログラム」(シナリオ創出フェー ズ・ソリューション創出フェーズ、及び社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワー クの構築、および情報社会における社会的側面からのトラスト形成)の 2024 年度公募に重複して応募することはできません。
(3)現在、社会技術研究開発事業の研究代表者は応募できません。 (ただし、当該研究開発の実施期間が 2024 年度内に終了する場合を除く。)
提案者の要件
- 実施者を統括し、構想を実現するためにリーダーシップを持って自らプロジェクトを推進す ること。
- 研究代表者となる提案者自らが、国内の研究機関に所属して当該研究機関において研究開発 を実施する体制を取ること。
なお、以下に該当する方も、提案者として応募できます。
・国内の研究機関に所属する外国籍の方。
・現在、特定の研究機関に所属していない、または海外の研究機関に所属している方で、研究 代表者として採択された場合、日本国内の研究機関に所属して当該研究機関において研究 開発プロジェクトを実施する体制を取ることが可能な方。
・現在、海外に在住している日本人であって、研究代表者として採択された場合、自らが国内 の研究機関に所属して当該研究機関において研究開発プロジェクトを実施する体制を取る ことが可能な方。
※「国内の研究機関」とは、国内に法人格を持つ大学、国立研究開発法人、特定非営利活動法 人、公益法人、企業、地方公共団体等を指します。ただし、所定の要件等を満たしている必 要があります。
※民間企業等の大学等以外の研究機関に所属されている方も対象となります。
※不適正経理及び研究活動における不正行為にかかる申請資格の制限等に抵触していないこと。
- 研究開発プロジェクトの全実施期間を通じ、責任者としてプロジェクト全体に責務を負える こと。例えば、 研究開発プロジェクトの実施期間中、海外出張その他の理由により、長期にわたってその責 任を果たせなくなる等の事情が無いこと。
- 所属機関において研究倫理教育に関するプログラムを予め修了していること。または、JST が提供する教育プログラムを提案期限までに修了していること。
- 応募にあたって、以下の 4 点を誓約できること。
・「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成 26 年 8 月 26 日文部 科学大臣決定)の内容を理解し、遵守すること。
・「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成 19 年 2 月 15 日文部科学大臣決定/令和 3 年 2 月 1 日改正)の内容を理解し、遵守すること。
・研究提案が採択された場合、研究代表者及び研究開発実施者は、研究活動の不正行為(捏 造、改ざん及び盗用)並びに研究開発費の不正使用を行わないこと。
・本提案書に記載している過去の研究成果において、研究活動の不正行為は行われていない こと。
※上記は e-Rad の応募情報入力画面で、確認していただきます。
研究機関の要件
本プログラムにおける研究開発を推進することができる(委託研究契約を締結することができ る)のは国内の研究機関のみですが、民間企業、各種団体、NPO、大学など主体を問いません。
研究機関は、研究開発を実施する上で、委託研究費の原資が公的資金であることを十分確認し、 関係する国の法令等を遵守するとともに、研究開発を効率的に実施するよう努めなければなりません。
各研究機関に対して、プロジェクトの採択に先立ち、また、委託研究契約締結前及び契約期間中 に、事務管理体制・財務状況等についての調査・確認を行うことがあります。その結果、委託研究 費の適切な執行管理のために必要と認められた機関については、JST が指定する委託方法に従っていただくこととなる他、契約を見合わせる場合や契約期間中であっても、研究開発費の縮減や 研究停止、契約期間の短縮、契約解除等の措置を行うことがあります。 契約が締結できない場合には、当該研究機関では研究開発を実施できないことがあり、その際 には実施体制の見直し等をしていただくこととなります。
応募方法
提案は、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)により行っていただきます。 紙媒体(郵送、宅配便、持ち込みなど)及び電子メールによる応募受け付けはできませんので、ご 留意ください。
【問合せ】
お問い合わせは電子メールでお願いします。
RISTEX 2024 年度 提案募集ウェブサイト https://www.jst.go.jp/ristex/proposal/proposal_2024.html
に最新の情報を掲載しますので、必ず確認してください。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
社会技術研究開発センター(RISTEX) 企画運営室 募集担当
〒102-8666 東京都千代田区四番町 5-3 サイエンスプラザ
■社会技術研究開発事業全般の応募に関するお問い合わせ:boshu@jst.go.jp
■本プログラムへの応募に関するお問い合わせ:boshu-elsi@jst.go.jp
【e-Rad の操作方法に関するお問い合わせ先】
e-Rad ヘルプデスク https://www.e-rad.go.jp/contact.html
Tel. 0570-057-060(ナビダイヤル)9:00~18:00
※土曜日、日曜日、祝日、年末年始を除く